孤独死の相続について② 孤独死を発見したときの対応方法

孤独死を発見した場合、あまりに突然の出来事にパニックになってしまうかもしれません。まずは容体を確認して、取るべき対応を変える必要があります。

第一発見者で多いのは「職業上の関係者」

 孤独死の現状を定期的にレポートで発表している日本少額短期保険協会は、その定義を「自宅内で死亡した事実が死後判明に至った一人暮らしの人」としています。この状況からも、発見者が家族以外であるケースも少なくないと想定されます。

同協会の「孤独死現状レポート」(24年1月)によれば、第一発見者で最も多いのは「職業上の関係者」で51%、続くのが近親者で37.1%。

また、発見までの日数は、最多が3日以内で39.1%。平均では18日。男女比でみると、女性の方が発見されやすい傾向になっています。

もしも孤独死の現場に直面した際の対応

 もしも、近隣で「孤独死」の現場に直面したらどう対処すればいいのでしょうか。

生死が判別できない場合は救急車を呼ぶ

息はしているが返事がない、ぐったりしているなど、生死が判別できない場合は、救急車を呼びましょう。総務省消防庁が発行している救急車利用マニュアルでは、以下のようなケースは、ただちに救急車を呼ぶべきと定められています。

・意識、返事がない、または朦朧としている
・大量に出血している
・立っていられないほどのふらつき
・ろれつがまわってない
・顔面が蒼白い
・溺れている

このような状態であった場合は、すぐに119番に通報しましょう。電話の受け答えをする司令員が状況の確認をするために、以下のような質問をしてくるので、落ち着いて答えるようにします。

・電話をかけた人物の名前、連絡先
・当事者の状況、容体
・住所や、場所の目印になるもの

心臓マッサージや人工呼吸をするかどうか迷った際は、電話先の司令員に状況を判断してもらいましょう。もしも孤独死をしていた場合、体液等により感染症のリスクがあります。指示がない限り、体とその周辺に触れないようにしましょう。警察による検証が行われる可能性があるため、現場の状態を動かしてはいけません。

救急車到着時間の全国平均は、約8.7分となっています。あまりにも突然の出来事に驚いてしまうかも知れませんが、10分以内に来ることが多いので、まずは救急隊の到着を待ちましょう。

明らかに死亡している場合は警察を呼ぶ

 部屋から異臭がする、大量に流れた血が乾いている、体が腐敗しているような状態は、死亡していることを示しています。死亡が明らかな場合は、警察に110番通報しましょう。警察に通報をすると、遺体の容態や現場の住所、目印となるもの、電話をかけている方の名前、連絡先を聞かれます。

事故死や病死かもしれませんが、万が一、事件性のある死亡だった際に、操作の妨げになるため、遺体は動かしてはいけません。落ち着いて警察からの指示を待ちましょう。

孤独死を発見した後の具体的な流れ

 孤独死を発見した後は、どのような流れで事が進んでいくのでしょうか?ここでは、以下のような孤独死を発見した後の具体的な流れを解説します。

1.警察による現場検証

まず行われるのは、警察による現場検証です。孤独死は事故死や病死以外にも、他殺の可能性もあるため、事件性の有無を調べなければなりません。警察によって事件性がないことを立証されるまでは、故人の家へ、警察以外の出入りができなくなります。遺族も建物の大家、管理人も立ち入れません。また、携帯電話のような故人の貴重品は、捜査が終わるまでは没収されてしまいます。

事件性がなかった場合は、医師のもとへ遺体が移され、死因や死亡時刻の特定が行われます。目安としては1週間〜1カ月です。気候や死亡後の経過時間によってバラつきがあります。

2.警察による遺族への連絡

警察の現場検証の結果、遺体の身元が判明して遺族がいることがわかった場合、親、子、兄弟姉妹といった遺族に連絡がいきます。遺体の引き取りは、警察から遺体発見時の状況、死因の説明などを受けてから行われます。警察のもとを訪れる際は、戸籍謄本、住民票といった、故人との関係性がわかる証明書を持参しましょう。遺族であることの確認がスムーズに進みます。

遺体の状況によっては損傷が激しく、身分証も発見されなかった場合、DNA鑑定によって故人を特定することになるため、遺族への連絡が1カ月以上遅れるケースもあります。

3.遺族の確認が取れた場合

遺族に連絡が届き、故人との関係性が証明されたら、遺体の引き取り→死亡届の提出→葬式→火葬→遺品整理→特殊清掃という流れで進んでいきます。ここでは、各工程について詳しく解説するので、遺体引き取りが決定した場合は、こちらを参考にしてください。

3-1.遺体の引き取り

警察から遺体が発見された旨の連絡を受けたら、指定された場所に赴き、遺体を引き取ることになります。遺体を引き取る際は以下のような書類が必要になるので、事前に用意しておきましょう。

・故人の身分証明書
・遺体を引き取る方の身分証明書
・印鑑

死亡時の状況、死亡推定時刻、死因といった説明を受けて遺体を引き取ります。同時に死体検案書を受け取ったことを確認しましょう。この書類がないと死亡届の提出、火葬ができず、次の流れに進めません。死体検案書の作成や遺体の保管にかかわる費用の支払を請求されるケースもあるので、現金を準備しておきましょう。

3-2.死亡届の提出

死亡届は指定の区役所、市町村役場に提出する書類で、死亡の知らせを受けてから7日以内に提出する必要があります。手数料は無料です。

死亡届を提出しないと火葬ができません。遺体をそのままにしておくと衛生的に良くないため、お別れが済んだら、速やかに手続きを行って火葬の許可証を受け取りましょう。

死亡届を提出する先と、死亡届を提出できる方は以下のようになります。

・死亡届を提出する先
死亡者の死亡地・本籍地又は届出人の所在地の市役所,区役所又は町村役場

・死亡届を提出できる人
親族、同居者、家主、地主、家屋管理人、土地管理人等、後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者

3-3.火葬

病院や家で息を引き取った遺体と違って、孤独死として発見された遺体は、死亡からかなりの時間が経過していることが多く、腐敗により早急な火葬が必要な場合が多いです。遺体を遺族の家まで届けることもできますが、衛生面とコストを考慮すると、遺体が発見された場所の火葬場で火葬してしまうことが一般的です。

現地の火葬場に連絡をして、火葬の手続きを行いましょう。火葬場には地方自治体の運営するものと、民営のものがあります。

3-4.葬式

遺体や遺骨が届いたら葬式を行います。孤独死した遺体だからといって特別な手続きは必要なく、一般的な葬式と流れは変わりません。葬式の費用は遺族が払うことになりますが、孤独死した方が葬儀代を捻出するために、死亡保険に加入している場合は、その保険のお金を葬儀代に充てられます。葬式は規模が大きくなるほど費用がかさんでしまうので、バランスを考慮しておきましょう。

また、必ずしも葬式が必要というわけではなく、火葬をすることでお見送りをする直葬も葬儀の1つです。葬儀費用が捻出できない場合は、直葬という方法でお見送りをするのも選択肢の1つとして考えておきましょう。

3-5.遺品整理

葬儀が済んだら遺品の整理を行います。孤独死した方が賃貸物件に住んでいた場合は、すみやかに現状復帰して、部屋を引き渡さなければなりません。

家具や家電を撤去して、部屋を整理するだけでなく、金銭的な価値のあるもの、思い出の品、廃棄処分するものといった分別をしなければなりません。これらは遺族のさじ加減になりますが、判断が難しいものもあるでしょう。

携帯電話、各種サブスクリプション、クレジットカード、賃貸物件、電気、ガス、水道、インターネット回線など、解約が必要なものも多数存在します。

また、廃棄処分するものが多い、人出が少なく進捗が滞ってしまう、現場が遠方といった場合は、業者に遺品整理を依頼できます。完全に業者に一任するか、一部遺族が立ち会って行うかは選択できるので、利用を検討してみましょう。

ただし、相続放棄する余地があるような場合には、遺品整理の前にその判断を行うことが必要です。遺品の整理が「相続財産の処分」となり、相続放棄が認められなくなる場合があるからです。

3-6.特殊清掃

孤独死によって息を引き取った遺体は、発見が遅れると室内に汚れや悪臭を残してしまう可能性があります。そのような場合は、自力で部屋の原状復帰をすることが難しく、専門業者による特殊清掃が必要です。

孤独死の場合、遺体の腐食以外にも、ゴミの放置や汚物、害虫、害獣の発生といったリスク、精神的な苦痛も懸念されるため、自力で原状復帰するのが無理だと判断したら、早めに特殊清掃を依頼しましょう。

特殊清掃を引き受けている業者には、遺品の整理も引き受けている業者も存在するので、併せて検討してみましょう。

4.遺族の確認が取れない場合

1人暮らしの高齢者など、孤独死した当事者に、親、子供、兄弟といった遺族が見つからないケースは数多く存在します。警察が科学力を駆使して現場検証を行っても、身元がわからないケースも少なからずあります。また、必ずしも全員が遺族との関係性が良好というわけではないので、遺体の引き取りを拒否されてしまう場合もあります。

そういった場合は「行旅病人及行旅死亡人取扱法」という法律に則って、自治体が火葬をすることになります。

火葬した後の遺骨を引き取る方が出てこなければ、一定期間保管したのち、無縁塚(無縁墓)に埋葬されることになります。孤独死は、遺族が見つからなかった際に、その後の葬儀・お見送りもしてもらえない可能性があるため、あまりにも死者が報われません。次の章で、孤独死があったときを想定した準備について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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